第6章 先行研究分析

第1節 先行研究分析はじめに

ワンピースの作品中における多くの謎や伏線を読み解き仮説を提示する「考察本」は、すでに30冊を超えて出版されており、本稿もそのひとつだ。先行研究には、本稿における考察のきっかけやヒントになったものもあれば、結論の全く異なるものもある。

本章では、特に古代兵器ウラヌスに焦点をあてて主要な先行研究を紹介するとともに、本稿の仮説も含めて比較分析し、本稿のまとめとする。

第2節 古代兵器ウラヌス諸説

古代兵器ウラヌスは、ロビンの発言の中に一度登場したきりで直接的な情報は他に全く無く、その正体は、古代兵器プルトンおよび古代兵器ポセイドンとの「古代兵器」つながり、および「ギリシア・ローマ神話」つながりで間接的に想像するしかない。考察材料が著しく乏しいため、各研究者が同様のわずかな手掛かりを元に異なる結論に至ったり、自説を主張するでも先行研究を引用するでもなく、ただ論拠の乏しい可能性を示唆するにとどまるものもある。また、同一の研究者(チーム)が、時の経過に伴い、自説を変更していく経緯も非常に興味深い。

第1項 古代兵器ゼウス説

空島スカイピアのポーネグリフを読んだロビンのセリフから古代兵器プルトンに続いて古代兵器ポセイドンの存在が明らかになって以降、魚人島のポーネグリフを読んだロビンのセリフから古代兵器ウラヌスの存在が明らかになるまでの間、3つ目の古代兵器がいずれ登場し、それは古代兵器ゼウスだろう、という推察が割と簡単にできた。

プルトンとポセイドンはギリシア神話上の神の名であり、ゼウスと共に世界を三分割して統治した兄弟でもある。そしてワンピースの作中では、構成要素を「3」に揃えて均衡をとることが重視されているからである。本稿ではその手法をマジックナンバー3と呼んだ。

ところが、古代兵器ウラヌスの名の登場によって、マジックナンバー3の均衡は崩れた。表面上、古代兵器の数は3で揃ったものの、第三の古代兵器はプルトンとポセイドンの兄弟ではなく、祖父であるからだ。研究者は古代兵器ゼウスの存在否定派と、可能性を捨て切れない消極的肯定派に分かれることになった。

古代兵器ゼウス否定派は、プルトン、ポセイドン、ウラヌスで、マジックナンバー3が成立しているとみなしている。古代兵器ゼウス消極的肯定派は、その三者をマジックナンバー3の成立と解釈することに違和感がある。なぜ消極的なのか?といえば、ロビンが古代兵器の数は3だと断言してしまったからだ。それでは古代兵器ゼウスが入り込む余地はない。

本稿はロビンの発言を鵜呑みにせず、古代兵器の数をマジックナンバー3の組み合わせで5から8にまで積み上げた。古代兵器ゼウスの存在について積極的肯定派であり、その上既に登場済みであるとの主張は先に述べたとおりだ。

   ■『ワンピース最終研究
   ■『ワンピース最終研究2
   ■『ワンピースの黙示録
   ■『ワンピース究極考察



ワンピース最終研究―海賊王の血脈と古代文明の謎


ワンピース最終研究2


『ワンピース』の黙示録


ワンピース究極考察

ワンピース最終研究』の考察は、大変に興味深い。

第三の兄弟「サボ」が読者に隠されていた点と、ゼウスがクロノスに隠れて育てられた点を結びつけて古代兵器ゼウスの存在を仮定し、その能力は当然に「雷」と推察しながら、結論で日和ってしまった。

ワンピース最終研究』P147
「ひょっとしたらエネルが『ゴロゴロの実』の能力で雷を操って、
 空島で“全能の神”を自称していたのも、古代兵器ゼウスの
 存在を匂わす伏線なのかもしれません。」

どうしてここで、仮説として「古代兵器ゼウス=エネル」をもっと強く主張し、検証を深めることができなかったのか? 隠し切った尾田と、その片棒を担いだロビンを褒めるべきなのか? 本稿で主張したように、「古代兵器ゼウス=エネル」説には複数の傍証がある。『ワンピース最終研究』はその幾つかに確実に触れ、掴みながらもあっさりと手放している。

ワンピース最終研究』P150
「そして辿り着いた結論が、ゼウスが存在するとしても
 “隠されている”ことです。」

「隠されているのだから未登場のはず」という思い込みから、エネルを隠されたゼウスとして見出しながら自ら否定し、「可能性の示唆」と解釈してしまった。そのため、古代兵器ゼウスの在処についても、「1万メートルのシンメトリー」に気付くことなく、根拠の薄いまま「ラフテル」であると主張する。

「隠しているから未登場」、「隠している場所も未登場でそれはラフテル」では、物語の仕立てとして芸がない。推理小説において犯人は、序章か第1章、あるいは可能な限り早い段階に登場するのが鉄則だ。それでこそ読者の推理する面白さ、答えを見出した時の驚きと喜びを演出できる。

ワンピース最終研究』発刊後、ワンピースの作中で、魚人島のポーネグリフを読んだロビンのセリフから古代兵器ウラヌスの存在が明らかになると、これを受けた『ワンピース最終研究2』では考察の軌道修正が図られることになる。

第2項 古代兵器ウラヌス=方舟マクシム説

「古代兵器ウラヌス=方舟マクシム」説は少数派だ。

   ■『ワンピース最終研究2

古代兵器ポセイドンがしらほし姫と方舟ノア、つまり「人」と「船」の組み合わせであること。ウラヌスは天空神であり、古代兵器ウラヌスも「天空」と関わりかあるだろうこと。この2つのキーワードから、「空飛ぶ船」=「方舟マクシム」が古代兵器ウラヌスだという。

さらに、エネルが月の地下都市ビルカで発見した壁画に描かれる舟と思われるものも、古代兵器ウラヌスの候補として挙げている。

前巻『ワンピース最終研究』では、古代兵器ゼウスの存在を仮定し、ゴロゴロの実の能力者エネルがそれを示唆しており、ラフテルに隠されているだろう、と推察したが、著者は自信がなかったのか、強い主張にはならなかった。そして、古代兵器ウラヌスの存在が明らかになると、古代兵器ゼウスの存在には固執せずあっさりと撤回してしまった。

ウラヌスも天空神で方舟マクシムは空を飛ぶからと、「天空」つながりで「古代兵器ウラヌス=方舟マクシム」説へと転向したのだ。ロビンの赤いニシン(ミスディレクション)にまんまとはまったかたちだ。真実に辿り着いた猟犬の鼻を引き剥がす、赤いニシンの臭いの強烈さよ!

ワンピース最終研究』はそもそも「古代兵器ゼウス=エネル」説から出発したため「古代兵器ウラヌス=方舟マクシム」へとよれて少数派になったが、「古代兵器ゼウス=エネル」説を背景に持たない多数派は、「古代兵器ウラヌス=ナミ」説から出発することになる。

第3項 古代兵器ウラヌス=ナミ説

「古代兵器ウラヌス=ナミ」説は間違いなく主流派であろう。そしてそのほとんどすべてが、以下2つの論拠のどちらかあるいは両方を採っている。

 ① 「古代兵器」つながり
   ・しらほし姫とナミは容姿や生い立ちがとても似ている
   ・しらほし姫は古代兵器ポセイドンである
   ・従ってナミも古代兵器と関係がある
   ・ところで古代兵器プルトンは戦艦である
   ・ナミは古代兵器プルトンではなく古代兵器ウラヌスと関係がある

 ② 「天候」つながり
   ・ウラヌスは天空神なので古代兵器ウラヌスは天候に関係がある
   ・ナミは天候を操る女である
   ・従って古代兵器ウラヌスとナミは関係がある

本稿では、天空神ウラヌスの「天空」はあくまでも「宇宙・全世界」であり、ナミが「天候」でつながるのは「古代兵器ウラヌス」ではなく「古代兵器ゼウス」だと主張した。

さらに、古代兵器ウラヌスの正体についても「宇宙・全世界」をキーワードに考察した。本稿ではその候補を挙げるにとどめ、詳細な検証は次稿以降に譲る。

   ■『「ワンピース」後半戦の研究
   ■『「ワンピース」未解決の謎を追え!!
   ■『ワンピースの黙示録
   ■『ワンピース解読王
   ■『ワンピース最終研究4
   ■『ワンピース伏線王
   ■『ワンピース極大予言書
   ■『ワンピース海賊王への航路



『ワンピース』後半戦の研究


『ワンピース』未解決の謎を追え! !


『ワンピース』の黙示録


ワンピース解読王


ワンピース最終研究〈4〉立ちふさがる世界三大勢力と黒ひげ海賊団の謎


ワンピース伏線王


ワンピース極大予言書


『ワンピース』海賊王への航路

論拠として①は雑すぎる。情報量の少ない本件をあれこれ考察する意味は薄いが、割と定説に近い感じで誰もが主張するし、取り上げないのもなんなので①を紹介する、といった感じが多い。さらに②を加える主張が多いのだが、「ウラヌス=天空」の解釈が誤解であるため、主張を補強できていない。もちろん、「ウラヌスの天空とゼウスの天空は意味が違うのだ」という本稿の主張も、尾田が「ウラヌス=天候」として古代兵器ウラヌスを描いてしまえば覆る。尾田はワンピース世界の神であり、それこそ「デウス・エクス・マキナ」そのものである。

ロビンの撒いた赤いニシンの効果は絶大で、前掲のように多くの考察本で取り上げられ、さらには『ワンピースの最終研究』シリーズをも巻き込み、『ワンピースの最終研究4』に至っては「古代兵器ウラヌス=ナミ」説へ吸収されてしまった。最初の気付きが目を見張る内容であっただけに、このような主張の変遷は残念でならない。

ところがこの主流派も、時間の経過に伴い進化していく。

第4項 古代兵器ウラヌス=ドラゴン

「古代兵器ウラヌス=ドラゴン」説は、「古代兵器ウラヌス=ナミ」説から派生した説のようだ。天候つながりで「古代兵器ウラヌス=ナミ」説を主張したところ、どうやらドラゴンも天候と関わりがあるようだと気付き、次第に「古代兵器ウラヌス=ドラゴン」説のウエイトが増していった。

   ■『「ワンピース」未解決の謎を追え!!!
      ⇒ ナミ説
   ■『ワンピースの黙示録
      ⇒ 主説:ナミ説、補説:ドラゴン説
   ■『これからの「ワンピース」の話をしよう
      ⇒ ドラゴン説、ナミ説 五分五分



東大ワンピース研究会 これからの『ワンピース』の話をしよう

そもそもウラヌスの「天空」を「天候」と解釈する点は賛同できないが、ドラゴンに着目した点は本稿考察の参考にさせていただいた。

本稿では、ナミは天候、ドラゴンは嵐を操る能力を持ち、雷を操るエネルと共に古代兵器ゼウスの候補であると主張した。天候、嵐、雷はどれも天空神ゼウスが司るものであるからだ。

第5項 古代兵器ウラヌス=ルフィ説

「古代兵器ウラヌス=ルフィ」説は少数派だ。加えて、それぞれに論拠が異なり、かつ、残念ながら理解が困難である。

   ■『ワンピース最強考察Z



ワンピース最強考察Z

通常だと、ナミが天候、ドラゴンが嵐、エネルが雷と関連することに着目してそれぞれに考察を深めるところ、それらに加えてその三者と関わらない天候・・・嵐や高波、夜明けまで含めて全て「ルフィ」が引き寄せたと解釈し、「ルフィ=天候=ウラヌス」と仮定する説だ。

主人公のルフィも古代兵器と直接的に関わって欲しいという願望からくる結論ありきの強引さを感じないでもないが、注目すべきは、「古代兵器ウラヌス=ルフィ」説が「古代兵器ウラヌス=海賊王」説から展開されている点だ。海賊王ロジャーがエッド・ウォーの海戦で嵐を味方につけて金獅子のシキに痛み分けしたエピソードを傍証のひとつとして、「古代兵器ウラヌス=海賊王」説を唱える。

本稿では、これをヒントに「古代兵器ポセイドン=海賊王」と仮定した。ルフィが、エネルの問に答えて、海賊王とは「海の王」だと発言しているからだ。

『ONE PIECE』第30巻280話
エネル
「カイゾク王?
 そいつはどこの王様なんだ…?」
ルフィ
「世界の偉大な海の王だ!!!!」

さらに冥王レイリーの存在から、「海賊王を輩出する海賊団における古代兵器のマジックナンバー3」を考察した。ロジャー海賊団は海賊時代の原点であり、情報量は少ないものの、おそらく様々な謎の鍵を握っていると思われる。研究者たちの検証を期待したい。

   ■『東大生が読み解くワンピース伏線考察



東大生が読み解くワンピース伏線考察

なぜ「古代兵器ウラヌス=ルフィ」であるのか、その論理の展開が独特であるためどうしても理解できず、従ってここに要約してご紹介することもできない。大変に申し訳ない。

ただ、その論理展開の中で、「三種類の覇気」と「人が自由の答えを求めるかぎり止めることのできない(3つの)もの」、さらには「3つの古代兵器」がマジックナンバー3として関連しているとの指摘は極めて刺激的で、インスパイアされた。

もっとも、本稿では3つの関連については全く触れていない。正直に言って、自信を持って主張できる結論に達することができなかったからだ。おそらく、本稿の冒頭で挙げた主要なマジックナンバー3は全てリンクすると踏んでいる。ただ、ひとつひとつへの精査と理解が足りないため、論理のところどころに矛盾が生じてしまうのだ。

マジックナンバー3の統一理論は、今後の研究課題としたい。


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